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2018年5月 7日 (月)

唐組「吸血姫」を観に行く

 ゴールデンウィーク、大阪の南天満公園でやった唐組の『吸血姫』を観に行った。
 
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 谷町線の天満橋駅で下りて、橋を渡ると南天満公園があり、橋を降りる階段を真ん中に左右どっちにも広がっている。どっちに行こうかと思い、赤い花の続いている草花があるほうへ歩いたが、見事はずれる。
 
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 かなり歩いて、マズい、どうも違うようだと、反対方向へきびすを返し、公園の端の方まで歩いて行って、やっと紅いテントをみつけた。
 
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 午後3時というところか、テントは張られつつあるところ。作業している劇団員の姿がみえる。
 
 午後2時からやっているという受付所を探す。回り込んでいくと車の後ろの所を大きく開いて人が座っている。目の前にパンフレットとかが並んでいるから、ここが受付だろう。車の中が受付所だ。
 
 ここで当日券を買う。案内のハガキがあると100円安くなるというからハガキをみせる。3500円になった。
 
 さてここからの時間も重要だ。芝居の始まるまで、正しくいうと開場時間までどう過ごそう。
 
 なるべく前の方に座ろうとすれば、早い時間に受付所に行ってチケットを買い、テントの中の席に向かう順番ともいえる番号を書いた札をもらわなければならない。しかし早すぎると時間をもてあましてしまうのだ。受け付け開始時間早々の2時くらいに受け付けすると、開場時間の6時半まで4時間を越える時間がある。
 
 この時間というのがけっこう妙な時間になるのだ。
 
 今回は天満橋駅を出てくる時みつけていたマクドナルドに行くことにした。ここで時間をつぶそう。
 
 窓ぎわの席にすわる。
 
 ゴールデンウィークで人がいっぱいだ。
 
 マクドナルドの窓ぎわの席の向かいに川がながれている。きっと天満川とかいうんだろう。川とマクドナルドのあいだに道があり白いテーブルや椅子がいっぱい置かれている。人たちはマクドナルドで買ったハンバーガーを、あるいは他のところで買った弁当なんかを食べている。話に夢中の人たちがいる。川をみているひとがいる。
 
 唐組・第61回公演『吸血姫』
 
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 40何年振りかの再演といっていたようにおもう。
 
 ぼくは初めて観る。
 
 作=唐十郎 演出=久保井研+唐十郎
 
 最初に言ってしまうと面白かった。緊張感にみちた面白さだった。
 
 薄暗い舞台で老いた白衣の看護婦高石かずえを演ずる銀粉蝶は、セリフが柔らかく、なめらかで存在感があった。年齢からして役にぴったりだった。舞台では初めて観た。ああこの人が銀粉蝶かとおもった。
 
 役者はだいぶ入れ替わっている。世代代わりか。辻孝彦はおらず、稲荷卓央は今度も出ていないし、赤松由美もいない。気田睦もいない。
 
 新しめの役者のなかで目についたのは清水航平、大鶴美仁音、大鶴佐助といったところ。大鶴美仁音はかたむいた緊張感をずっと維持していて、この舞台に現実感をあたえていた。大鶴佐助は妙におかしなところのある役者だった。
 
 長めの芝居で、大正ロマン風であり、横溝正史の怪奇ロマン風であり、関東大震災の話であり、悲しい女の話であり、芸能界の話であり、吸血する男の話でもある。
 
 やっぱり下水の臭いがする影の街でどこかに這い出ようとする男たちと女たちの話でもある。
 
 大阪駅で地下鉄谷町線の乗り口が分からずウロウロしているときは、こうまでして観にくる値打ちがあるんだろうかと思ってしまった。
 
 東京から岡山に引っ越しして、最初に観ようとする唐組の芝居だ。東京にいたときと比べると、格段に観る努力が必要になる。
 
 交通費、宿泊費がけっこうかかるし、今回は弟がいいホテルを用意してくれていて助かったが、来年もというわけにはいかん。地元の岡山か福山あたりで興味を持てそうな劇団をみつけて、そっちに乗り換えよう・・・と歩きながら考えたりもしたが、夜の南天満公園で、川のそばで、貴重な時間と体験をもったのは確かだ。たぶん、来年もきっと来ることになるだろう。
 
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