綿矢りさ「勝手にふるえてろ」
綿矢りさの『勝手にふるえてろ』(文藝春秋)を読んだ。図書カードを使って買った。
前作の『夢を与える』は綿矢りさは自分に向かないものに手をだしているという印象だったが、今度の『勝手にふるえてろ』は自分の土俵に帰ってきたという感じがする。でも記憶でいうが、『蹴りたい背中』のころとは文章がちがっている、と思う。
綿矢りさは『蹴りたい背中』を読んだときから気になっている作家。『蹴りたい背中』、『夢を与える』と読んできて、『勝手にふるえてろ』で三つめの小説を読むことになる。
『勝手にふるえてろ』は軽やかで面白い。楽しい。主人公の「わたし」の気持ちを書いていくときの文章のノリのよさにこの作家の持ち味が出ていると思う。対面でしゃべっているのを聞いているような感じだ。
ひっかかるところもある。主人公の女性がとても相対的に描かれていることだ。ひっかかる。どの道を歩いているんだろうと思う。思いなおしも、折り合うことも、生きていくための考え、主人公の成長なんだろうと読むこともできるが、そう思いながらも書いている綿矢りさの考えは、芯はどこにあるんだろうと思う。ぶらぶら揺れているこの作家の足場も読んでいる気がした。
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