金成隆一「ルポ トランプ王国2」
前に読んだ『ルポ トランプ王国』が興味深く読めたので、その続きになる「2」も読んでみた。これも読み応えがあった。こっちの方がもっと味わい深い感じだな。
テレビでよく見るトランプの集会で、トランプ大統領とその後ろに支持者たちが立ち並んでいる映像をみると、どうしても詐欺師と魂を抜かれた人たちという印象を持ってしまうけれど、この『ルポ トランプ王国2』を読むと、支持者たちもあの後ろに立っている人たち、あのタイプ一色というわけではないことがわかる。
トランプ大統領の存在は国にではなく自分への忠誠を求め、自分に忠誠を果たす者たちだけに見返りを与えるという在り方は、アメリカの民主主義の、政治機構の危機をもたらすと思うが、その政策そのものは人物のようにメチャクチャというわけではない。オバマ時代よりも本当の意味でまっとうな政策もあると思う。
それとトランプがこれほど嫌われるのは、アメリカの、世界の、民主主義プラス資本主義の国々の共通のシステムにおける障害物のような存在になっていることもあると思う。
オバマ時代にしても、オバマ大統領は政治家にしては善良な人だったと思うが、だとしてもひたすら政府が個人を、思想を、社会を、家族を、法によって、「善なる思想」によって管理するという超管理主義社会の方向へと突き進んでいたことは確かだから、当のドナルド・トランプ自身はそんな気はないわけだけれど、そのスマートな超管理主義社会への展開の障害物となっていて、結果として<トランプ大統領>というのは奇妙に面白い存在でもあるのだ。
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