詩へ向かう旅 浅野牧子「なぜ詩を書くのか」
詩というものにたどりつこうとするみずみずしいエッセイというか評論集。
高度な表現理論が展開されるわけではないが、姿勢がよい。背が伸び、足はときどき引っかけて、ぐらついたりするが、前へ進む。
もうよっぽどなものは別にして、「高度な言語表現理論」なんて読む気がしないのだが、こういう姿勢のいい、まっすぐな声を出そうとしているものは読もうという気になる。
軽いくるぶしを持っているが、倫理のほうへ勢いをもつ人であり、ぼくとはちがう方向にすすむ人だろうとおもうが、こういうふうに詩を書こうとする人、接しようとする人は貴重なのだ。
原理として作品は作品であり、作品と人はちがうものだというのはそのとおりであり、その通りだとしかいいようのないものだけど、時代も社会も状況も変わって、その思想はあきらかにさびついている。あたらしい切実な更新が必要なのだ。
この問題意識のちかくに浅野牧子はいるようにおもう。
本能的でもあり、感染病的でもあるあの上昇志向からも自由のようだ。
表紙カバーの写真にリュックサックを背負って歩く女の人のうしろ姿が写っている。この人が浅野牧子だろう。広々とした風景を歩いている。詩へ向かう旅のエッセイ集。
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