唐組「夜壺」を観に行く

ぼくはカレンダーをメモ帳代わりに使っていて、予定を書き込んだり、用事を書いておいたり、人と会う予定を書いたり、という具合につかっている。そういうカレンダーが1992年の分から残っていて、最近じぶんの時間をたどってみようという気になって、たまったカレンダーを見たりするのだが、唐組の芝居はじつによく観に行っている。感心するぐらいよく観ている。
唐組の芝居に惹かれているということはもちろんあるのだが、ひとつには当日観に行っても券が買えて、その日に観ることができるということが大きかったとおもう。
というわけで、今回も観に行った。
唐組・第58回公演、『夜壺』。
作=唐十郎
演出=久保井研+唐十郎
場所は猿楽通り沿い特設紅テント
お茶の水駅から歩いて10分くらいの所で、明治大学の校舎がそばにある。去年も来ているから大丈夫だろうとテキトーに歩き出したけれど、例によって迷ってしまい、遠回りをしてしまったが、無事に紅テントをみつけた。
舞台から稲荷卓央や岩戸秀年がいなくなり(岩戸秀年はカレーのCMでよく見かけるようになった)、唐組の役者陣も変わりはじめている。
気田睦を柱にして赤松由美、岡田悟一、福本雄樹といった役者たちにいままであんまり目立たなかった者たちがからんで『夜壺』は繰り広げられる。
売れないマネキン造りの会社、中小企業の奈田マヌカンで繰り広げられる騒動は、唐組のものとしては跳ねてない、しんみりしているなという印象だが、辻孝彦が登場してからは唐組らしい華やかさとニギヤカさがでてきた。
地下の通路をおもわせる薄暗い舞台の上での、物語のうねりと進行は分かるのだが、物語のセリフ上のながれはよくつかめないという唐組のいつもの舞台だが、精悍さをただよわせた辻孝彦が登場してからの芝居はよかったとおもう。しっかり物語と人がからみあっていた。
これは失敗作か、と天井を見上げて思ったりしていたんで、余計グッときた。
舞台と現実の通路がこじ開けられ、風が吹き抜け、人が向かっていくラストはいつものとおりだが、最後の最後、何か大切なものが成就した。そんな情景がみえたようにおもう。

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