「リップヴァンウィンクルの花嫁」観想

岩井俊二監督は『四月物語』が鮮烈な印象だが、この『リップヴァンウィンクルの花嫁』はそこから遠くにある映画だ。
長くむずかしい映画だ。
『四月物語』が緑色ひとつで描かれた映画だとすれば、『リップヴァンウィンクルの花嫁』はいろいろな色が混じってはっきりしない。
人間が壊れかかっているような社会に作られた映画ということになる。
観終わってカタルシスがあるというわけではないが、こういうふうにならざる得ないよなということはある。そこがぼくとの結び目になる。
滝から落ちていくようにあちこちで不運で不幸な目に会う女性を演じる黒木華は、演じて演じて自然さを出そうとするスタイルだからどうしてもワザとらしさを感じてしまう。といっても人間の非情さにつぎつぎと体を強打されるような役を新人女優に任せる気には岩井俊二監督としてはならなかったんだろう。
光っているのは、今の時代のワルを造型している綾野剛だ。段々ととんでもないワルだと分かってくる。こういうのには気をつけよう。
朝9時10分からの上映だったけれども、それを考えればかなりの人出で、そしてさすが岩井俊二監督作品というべきか、騒がしい人はいず、みんな静かに観ていた。
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