「秋刀魚の味」観想
「さんまの味」と読む。小津安二郎監督の1962年の映画。
前に観た『小早川家の秋』はとくに文句をいいたいとは思わなかったが、この『秋刀魚の味』は平凡な日常生活の完全賛美映画とでもいいたい映画で、あたりまえの日常を否定されれば、いや、それは・・・と言いたくなるが、えんえんと美しいところだけ撮ったような日常生活を観せられつづけると、さすがに違和感というか、ちょっと待って・・・といいたくなる。
映画の終盤で娘が嫁いだあとの父親(笠智衆)のくずれをのぞけば、ほぼそういう感じだ。
いまの時代で、この小津安二郎の『秋刀魚の味』をそのまま観て、感動する人なんていないと思う。
1962年にこの映画を観たひとたちはどう思ったんだろう。
この家族のあたりまえの生活をうたがわない美しく美しく撮った映画は当時どう受けとられたんだろう。1962年ごろは反時代的な匂いをもった映画たり得たんだろうか。小津安二郎はどういうつもりでこの映画を撮ったんだろう。何かに対抗してこういう映画を撮ったんだろうか。この映画に<対抗>するようなものが当時あったんだろうか。
« 「ひょうたん」58号 | トップページ | 春の風景 »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- ベルトルッチ「暗殺の森」(2023.10.31)
- 「スリ」という映画のポスター(2023.10.26)
- 「孤独のグルメ」(2023.03.09)
- 「ガラパゴス」(2023.02.14)
- 「ガラパゴス」(2023.02.07)
« 「ひょうたん」58号 | トップページ | 春の風景 »
コメント