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2016年1月12日 (火)

ドナ・ファーリ「自然呼吸法の本」

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 ドナ・ファーリ『自然呼吸法の本』(訳佐藤素子)。

 いい文章で、読んでいて落ち着いてくる。カラダの本で、読んでいて落ち着くというのは、これまで読んだ限りでは野口晴哉、片山洋次郎の本くらいだった。

 呼吸というものへの考え方がしっかりしている。哲学といっていいものを感じつづけている。

 ただ自分でやるトレーニングの方法を本のなかでいろいろ説明しているが、これは整体とか気功とかなにか身体を動かすことをじっさいに体験したことのないふつうの読者が、一人でやるのはむずかしいだろう。

 本の半ば以降は、ヨガ用の用具が必要だし(毛布などで代用できるとしているが)、一般向けというよりもヨガをやっている人のための専門書という感じが強くなる。

 ヨガ系統の人らしいが、すぐれた人だと思う。

 この本は1998年に『自分の息をつかまえるーー自然呼吸法の実践』という名で出版されていて、2011年に『自然呼吸法の本』と変えられてあらためて出版されている。

 このタイトルのほうがいい。

 書いているのはドナ・ファーリという人。

 女の人だろう。プロフィールによるとアメリカに生れて、現在ニュージーランドに住むとある。

 呼吸というものへの考え方は日本の整体に似ていると思った。とくに基本的なとらえかたは片山整体とおなじじゃないかと思う。

 片山洋次郎の整体は、この『自然呼吸法の本』を読んでいて思ったが、日本的であり、受動性をもっているものだ。ドナ・ファーリのほうは、現代の機械的に忙しい、からだという視点のない思考が支配する社会への批判をひそめながら、からだへの接し方が能動的であり、その能動性が、おもしろいことに近代・現代の社会の西洋医学と通じるものがある。

 文句をいいたいところもあって、エクササイズやトレーニングの、いわゆる実技のときの説明がもうすこしわかりやすく、こまかくていいと思う。それとこれは翻訳の関係だとおもうが、文章の意味が通らないところがあるのだ。

 タイトルを変えたときに、もういちど編集者や翻訳者がちゃんと目をとおせばよかったのだ。

 しかし、よい本にめぐりあえたと思う。いま二回めの三分の二くらいを読んでいるところだが、このまま三回めを読むことになるだろう。新鮮な空気を吸っているような感じがするのだ。

 

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