「野火」を観に行く
渋谷のユーロスペースに塚本晋也監督の『野火』を観に行った。大岡昇平の小説の映画化だ。
まえから気になっていた映画で、でもなんか腰が重くて観に行かなかった。新聞に載った塚本晋也のインタビュー記事を読んでようやく観に行く気になった。それでやっているはずのいつも行く映画館の上映スケジュールをしらべてみると、『野火』の上映はもう終わってしまっていた。
それで渋谷まで行くことになった。
塚本晋也は『野火』をつくった動機として、あやうい方向に行こうとしている日本の政治が、その政治への抵抗感が動機のひとつになったというようなことをしゃべっていたと思う。しかし映画そのものは兵士たちの身体がそげ、飛び散っていく戦場の描写、いのちを失った人間の身体のグロテスクななまなましさを観ているうちに、反戦というよりもそれを突き抜けて寓話を観ているような気持ちになる。ここに塚本晋也の資質をみる。
塚本晋也といえば自主制作というイメージで、ほとんどの作品が塚本晋也の監督、脚本、主演とおもっていたけれど、公式サイトをさっとみてみると、そうじゃなかった。
ぼくが前に、2010年に観た『鉄男』もよくよく考えてみれば、思い出してみれば、主演じゃなかったな。
今回の『野火』は塚本晋也の監督、脚本、主演だ。戦場を右往左往する肺病やみの兵士役だけれども、これは鬼気迫るものがあって、肉も落ちていて、塚本晋也のこの映画への打ち込み方のすさまじさを感じる。
『ナイトクローラー』のジェイク・ギレンホールもすごかったが、『野火』の塚本晋也もすごい。
目に残ったのは、塚本晋也演じる田村一等兵が戦争を生き残り、日本に帰って来て、じぶんの家に住んでいるときの映像の暗さだ。その家の闇のような暗い映像が目に残った。
映画を観ながらたびたび思ったけれど、塚本晋也の作った映画のなかでいちばん金をつかっている映画じゃないかと(無意識にだいじょうぶなんだろうかと思ってしまいながら)観た。小屋が派手に燃え上るなど、カネ使ってるなあと思った場面がいくつもあった。
音楽が印象に残ったので誰だろうと、最後の出演者などの名がスクリーンに流れるのをじっと見ていたが、わからなかった。それで『野火』の公式サイトでしらべると、石川忠というひとだった。
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