「エデンの東」を観に行く
ものすごくいい映画だった。テレビやビデオで何回か観ているが、その印象とはまったくちがう映画だ。ジェームス・ディーンの映画ではない。エリア・カザンの映画だ。
骨組みのしっかりしている映画だ。ふたごの兄弟アロン(リチャード・ダヴァロス)とキャル(ジェームス・ディーン)と父親(レイモンド・マッセイ)。家を出ていった母親(ジョー・ヴァン・フリート)。アロンのやさしい恋人(ジュリー・ハリス)。これらの人々が織りなす愛と憎しみ、結びつきといさかい。人間の骨格が描かれている。
ジェームス・ディーンの映画ではないといったが、ジェームス・ディーンはこの映画ではなくてはならない俳優となっている。愛されないため、いじけて歪んだ性格の持ち主となってしまったキャルを見事に造型している。おそらく監督のエリア・カザンの期待以上だったにちがいない。これが映画初出演のはずだから、すごい俳優だ。ジェームス・ディーンの登場はやはりショックだったろう。
脳卒中でたおれ、満足に口もきけなくなった父親とキャルは最後に和解するのだが、それでキャルの性格は浄化され、正しい人になったかというとそうではない。キャルはおそらく変わらない人間として描かれている。ジェームス・ディーンの演じたキャルはその繊細さ、内面性を語られることが多いが、そうではない。傷つきやすくて、いじけやすくはあるのだが、同時に頭がよくて、タフで、金儲けもでき、傷つけられれば相手を思いっきり傷つけ返すこともできる人間なのだ。映画ではそう描かれている。これはジェームス・ディーンでなければ演じきれない人間だった。
物語としても弟キャルは兄アロンを争いの末、戦場へと追いやり、その恋人アブラを奪いとってしまうような結果になっている。これで終わりというような話ではない。
この「かんたんには浄化することのない人間」キャルを描くことによって、この映画は太い骨格をもった映画になっている。人間ってこんなもんかもしれないなと思った。
映画館で観てみるものだ。『刑事ジョン・ブック 目撃者』もテレビで観たのとまったくちがう印象を映画館でうけて衝撃だったが、それ以来という感じだ。観終わったあとの感じはとてもいい。
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