今年初めて雪が降る
1月30日、今年東京に初めて雪が降った日。
イブ・モンタン主演、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の『恐怖の報酬』を観に行った。
雪が降っていれば客は少ないだろうとあてこんで観に行った。10人くらいの客だった。
10時にはじまって12時半すぎに終わった。なかなかの映画だと思ったけれど、1953年の映画だからいまの生活のテンポとはちがいがおおきくて、ゆるく感じる。しかし前半が終わりニトログリセリンのトラックでの輸送がはじまってからは手に汗にぎりながら観た。
ビデオで観たときの印象とはまったくちがう。
イブ・モンタンの恋人の描かれ方はいまはもうできないほど野放図だ。
イブ・モンタンがニトログリセリンの運送に成功し、4000ドル手にして、恋人の待つところへ帰って終わる、と思ったらそうではない。
もうひとひねりするのだ。
終わり方が、最後カタルシスを与えて終わるのではなく、もうひとつ物語を入れこむ。あれは余計だったなと帰り道おもうけれど、1950年代の、あのころの生活のテンポのゆるさが人間に余裕をあたえているのじゃないか、それで最後にひとひねりできるのかもしれないと思った。いまの観客ほど、あのころの観客は最後のカタルシスを熱望していなかったかもしれない。
ゆるく感じるけれど、人間の身体の生理にとっては1950年代の生活のリズムのほうが合っているのかもしれない。
いつ行っても映画館で見かける顔があって、金曜日なら金曜日というある決まった曜日にみかけるというのではない。曜日がちがっていてもいる。上映中1、2回くらいビニール袋か紙袋で大きな音をたてるひとで、それで覚えてしまった。
ひょっとして、この人は毎日映画館に来ているのではないかと気づいた。かならずこの映画館でやっている洋画の名作シリーズの催しで見かけるから、いつも来ているから、このシリーズは一本の上映が2週間くらいつづくから、毎日おなじ映画を観に映画館に来ていることになる。70歳代の男。おかしな人がいるもんだ。
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