ぶきみで凄かった「ゴーン・ガール」
デヴィッド・フィンチャー監督の『ゴーン・ガール』を観に行った。いちばんのおめあては『シン・シティ』だったけれど、3Dではない2D字幕版というのがおそすぎる時間からはじまるので、あきらめて『ゴーン・ガール』にした。
夫の浮気を目撃したのをきっかけとして、妻の反撃がはじまる。この妻エイミーの考えることがすごい。
じぶんが失踪し、世間に夫が殺したのではないかと疑いをもたせ、姿を隠しつづけることでほんとうに殺害犯ということにしてしまい、あげく死刑にさえしてしまおうというなんともすさまじい復讐劇で、根本は「あるべき夫の姿を演じようとしなくなった男」を許せない、許さないおんなの話だ。
演じるのが007映画でピアース・ブロスナンを相手に気品があってエロティックというボンドガールを演じたロザムンド・パイク(最初はミスキャストかと思ったが、決してそうではない。熱演だ)。夫を演じるのがベン・アフレックで、徹底的にいじめられ、痛めつけられる。ベン・アフレックは無防備さ、間の抜けた感じで観る者をイライラさせる。演技なのか、地なのか。演技力でこれほど「アホか。この男は」と思わせるならたいしたもんだ。
すごいと思うのは、この映画が現在の、現代の家庭や社会に生きる人間の象徴的な物語となりえているところだ。「こうなんだよな、いまは」とか「ちがうもんじゃないな」とか思わざるえない。調べてみたら原作のある映画だったが、デヴィッド・フィンチャーは現在の社会の人間の位置と心のうごきに足をふみいれて作っているといえる。ここは感心した。
映画が始まる前に座席にすわっていて、いろいろ考えることがあった。
ぼくは主張したいとおもうのだが、映画を観るということと、映画館で映画を観ているよこで、バリボリとお菓子を食われることとは、本来的に両立しないことなのだ。
どう考えてもそうで、食い物を抱えて座席にすわる者たちを見て、なぜ映画館で食いものを売るのか、もうおれはこの映画館には来ないと決意した。座席で唇をかみしめながら決意したのだ。そう決意したが、しかし観終わって正直いえば、こういう映画を観せてくれるなら、また来てもいいなとおもった。
食い物を抱えていた客たちも、なんとも不気味でまともに現実的ともいえるこの映画に、食うことを忘れたみたいで、ほとんど食い物を食べる音がしなかった。場をまちがえてしまったと身体が感じていたのだ。残念だったね。
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