「小さいおうち」を観に行く
一度目『小さいおうち』を観ようと映画館に行ったら、前四列しか空いていませんと言われあきらめて帰ってきた。今回が二度目、公開から二週間ほどが経って、平日だというのに客はよく入っている。
山田洋次監督の最新作。赤い瓦の屋根をもつ小さなおうちが舞台。その家の平井時子という若妻を演じるのが松たか子でとても魅力的だ。陽性であけっぴろげ、しかし不倫をするときはびっくりするほどなまめかしい。小さいおうちの女中、布宮タキを演じる黒木華も適役でかつ好演。そして亭主役の片岡孝太郎もいい味をだしている。
この家、小さいおうちも主役のひとりという感じ。昭和10年ごろの、小さいけれどモダンな家。昭和前期という風景になじむ。たしかにこんな家並みがあったんだろうなという気にさせる。
小さいおうちで起こった不倫物語を女中だった布宮タキが後年語るという筋立て。始まってからは山田洋次監督の力量をみる感じで、なつかしく鮮やかな情景とともに話しが運ばれていって、ぼくが観たなかでは『たそがれ清兵衛』に並ぶ作品かなと思ったりした。
それがだいたい3分の2くらいまでというところ。それ以降はだんだんやせていく感じがする。
スタミナ切れか『小さいおうち』の時代背景になっている戦争の時代へのメッセージをこめたいという焦りからかと思うけれど、今の時代もう映画を観て反戦的なメッセージを受け取ったからといって、反戦的になる大人というのはもういない。
小さいおうちの平井時子と布宮タキの人間の物語だけを語れば、語りきれば充分に背景にある太平洋戦争の過酷さと残酷さはあぶりだされると思うが、そのほうが映画としては豊かになったと思うのだが。
そう思うけれども、ここでどうしても反戦映画的な面がでてきてしまうのが、反戦映画的なメッセージがでてきてしまうのが山田洋次監督という人なんだろうと思った。いまの切迫した時代状況のこともあるだろう。
しかし目に残る。赤い屋根と松たか子と窓。松たか子が小さいおうちの赤い瓦の屋根のなかにある窓をあけて立つシーンが鮮烈だった。物語のどこの話だったかはっきり覚えていない。あの場面の鮮烈さだけ覚えている。不倫の相手が赤紙をもらったと告げに来て、立ち去っていく場面だったのか。次の日に会いに行こうとしているときか、あの情景がまだ目に残っている。
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