火の用心
地元でやる火の用心の集まりに参加した。
要請があったとき思いだしたのが、田舎にいたころ、小学生の時、小学生だけの火の用心をやっていたことだ。大人がひとりか、中学生が一人いて、リーダー役をやっていたと思う。火の用心と声を上げながら夜のまっくらな村をまわり、それが終わるとぼくらは解散場所からじぶんの家に帰ることになるわけだが、解散場所は公会堂のよこで、背には山があり高い林がある。祠(ほこら)もあった。最初は早足で、すこしづつ速くなり、駆け出し、全速力になる。灯りのほとんどない真っ暗な夜の道を、競争で、わくわくしながらしかし恐怖に締めあげられながら、ぼくたちは走りに走って家に帰りつく。そんな火の用心を思いだした。
あの村の、夜の細い道の、小さな川のにおいのする火の用心を思いだした。
それでまあこういう集まりにでるのははじめてだけれども面白いかもしれないと思ったわけだ。
地元の火の用心はふた組、それぞれ7~8人にわかれてこの地区をまわった。ぼくはどうせなら楽しみたいと思ったのでカチンコという木の音を立てるやつをすばやく取って、それで火の用心にでた。
先頭に立つ人がハンドマイクで「火の用心」と建ち並ぶ建物の窓にむかって声を出し、ぼくがちょんちょんとカチンコをたたき、そして全員で「火の用心」と声を出す。そういう火の用心になった。
先頭の人と、それに並んで歩く人はあるくのが速い、でかなりの早足でまわることになった。くねくねと曲がりあちこち入り込むが、9時に出発して9時半には終わっていた。しかし意外にくたびれる。ふた組がそろい、全員が集まったところで、最後に酒でも飲むことになるのかとおもっていたが、解散はあっさっりとしていた。こうして東京の「火の用心」はおわった。
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