吉本隆明の「七〇年代のアメリカまで」
吉本隆明の『大情況論』という本のなかに収められている「七〇年代のアメリカまでーーさまよう不可視の『ビアフラ共和国』」という文章を読んだ。
抵抗感のようなものをもったところもあるが、とても印象に残るエッセイというか批評だ。この文章はリアルタイムで『マリ・クレール』というファツション雑誌みたいな雑誌で読んでいて、本屋のいつもとはちがう雑誌の置き場所で立ち読みした記憶がある。胸打たれたといってもいい印象を受けたのだと思う。このなかで紹介されているカート・ヴォネガット・ジュニアの「ビアフラーー裏切られた民衆」という本をさがした。1980年代の後半のことだ。「ビアフラーー裏切られた民衆」という本はなく、このタイトルの文が『ヴォネガット、大いに語る』という文庫本に入っていた。いまでも持っている本だ。
この「七〇年代のアメリカまでーーさまよう不可視の『ビアフラ共和国』」という文章はいつもの吉本隆明とはちょっとちがった印象があって、人間というものの行いにたいしての諦念、ふっと体をゆるめたとき眼差しの下からあらわれる諦念のようなものを感じた。
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