「水の透視画法」
辺見庸の新しいエッセイ集。短さというか、長さがちょうどいい。新聞に連載したものだからこの長さになったようだ。
表紙のカバーの写真が秀逸。離して見るとハッとするような感じだ。
辺見庸という私(ワタクシ)から浮かびあがるうすい光をたよりにして、路地をクネクネと歩くふう。文学的なエッセイ集だ。もともと粘った独特の屈折のある人だけれど、その不可思議な屈折を外にはっきり出しているというか、行がそのように引かれているというか。辺見庸は「思う」を「おもう」と書くのは何故だろうと思ったりする。
「脳の病にたおれた」と書かれていて、病の結果自分の身体が不自由になったことがそのことが辺見庸のコトバの角度を視点を大きく変えている。ローアングルアンドズームの視線だ。日々の出来事を注意深く拾い反すうする。読む者に「強い人だなあ」とひるませるようなところは相変わらずあるが、「弱い者」の視線も初めて感じる。右半分が充分に使えなくなって、そのことは日々刻々耐えなければならないことだろうが、それによって得た感情や視線というものがあるわけだ。
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