「盲導犬」を観に行く
いつも唐組の紅テントで観ている唐十郎の戯曲を蜷川幸雄が手がけるとどうなるのだろうか、という思いで観に行った。暑い日だった。
『盲導犬』。
唐十郎作、蜷川幸雄演出。古田新太、宮沢りえ、小出恵介、大林素子、木場勝己らが出演。場所はシアターコクーン。
蜷川幸雄の演出は松たか子がジャンヌ・ダルクをやった『ひばり』以来。宮沢りえは『ジプシー』という舞台を観に行ったことがある。新宿だったかな、宮沢りえ最初の舞台だったかもしれない。ジプシーというロゴのはいっているTシャツを買ったのを覚えている。古田新太を舞台で観るのは初めて。
黒い床の奥にコインロッカーがいっぱいにズラリと並んでいる舞台美術がシンプルで鮮やか。対比という印象。蜷川幸雄の舞台を観に来たんだなという思いがする。
足の長い婦人警官が出てきて、グラビアタレントの誰かが舞台に進出かと思っていたら、バレーボールの大林素子だったのにはびっくり。ふつうに足のきれいな舞台女優という感じだった。
前半は古田新太の存在感が広がる。歌がいい。テントで聴いた誰よりも歌がいいと思った。古田新太という役者はそのままテントに出ても違和感がない感じだ。
物語は黒い床といっぱいのコインロッカーの前で繰り広げられる。ファキイルという「不服従の犬」と呼ばれる盲導犬が探されている。
だんだんと宮沢りえの赤いドレスの身体が匂い立ってくる。エロティックというか身体の匂いの広がりというか、身体からなにかがこぼれでてくるような感じだ。宮沢りえがいちばん唐十郎の世界からよく逸脱出来ているという感じだ。
蜷川版『盲導犬』にはテントで観ている芝居を立派な劇場で観るとこうなるのかという魅力的な場面がいくつもあった。いくつもあったが、唐十郎の作とカチリと噛み合っているという感じは正直なかった。合わないのかなあとも思った。ほかの人はどう思ったのだろうと注目していたが、どうなのだろう、どうだったのだろう。カーテンコールで熱い拍手がつづいたが、よくつかめない。
観に行ってよかったとも思う。古田新太という役者には好感をもった。このままでは唐組の芝居と『ラ・マンチャの男』以外の芝居を観に行かなくなるのではないかと自分で心配していたところだ。なにか新しい関心の芽のようなものがでてくるだろうか。
渋谷はひさしぶりだった。ものすごく暑い日だった。そしていつものように人がいっぱいだ。
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