「独航記」
辺見庸の『独航記』を読んでいる。エッセイ集だ。辺見庸の書くもの、話すことというのは陰々滅滅としていて、なかなか気が晴れるということにはならないが、この『独航記』は少し違う。息が継げる感じがする。
ダメ男ぶりをはっきり書いているのがいい。この人ふつうの人なんだなと思わせる。ふっ切れなかったり、すべきことをしなかったり、妙なものに惹かれたり、くどくどと考えこんだり、スケベだったり、自分勝手だったりということは、誰でもそうであるしかないことだ。全くそうじゃないという人間はいない。そうして人間の底にドロドロとした、名付けられない、切れ切れの、意志とははなれた混沌をみるというのは辺見庸独特の志向だとつよく感じる。
「ジャイアント馬場」のこと、「顔の大きい女」のこと、「恐山」のこと、「墓場」のこと、「掃除機」のこと、「カンボジア」や「中国」のことなどにふれる。
たぶん辺見庸の書いたもののなかで、いちばんいい本だと思うようになるだろう。
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