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晴れ。
新宿花園神社に唐組の『海星(ひとで)』を観に行った。
海星をヒトデと読むとは知らなかった。唐十郎の造語なんだろうかと辞書をしらべたらあった。そうか、たしかに形からすると海の星にみえる。
いつも当日券を買ったあと、開場までの時間をどうするかで悩むので、あまり早く出ず、昼の1時半ごろに部屋を出た。
新宿に出るのはひさしぶりだ。独特の猥雑感があるな。やはり人が多い。花園神社の唐組の受付で当日券を買い、それから紀伊国屋書店へ行って前から欲しかった文庫本3冊を買う。どこへ行こうか考えたが道沿いの喫茶室ルノアールへはいる。このとき3時半。
メニューから黒蜜抹茶ミルクとパストラミビーフサンドイッチを選ぶ。両方あわせて1180円。場所柄高いだろうとそのつもりで入ったので、まあこれでよし。黒蜜抹茶ミルクは結構いけた。
買った一冊を読みながら時間をすごす。6時まで居ようと思っていたが、5時までが精一杯だった。ウェイトレスがひっきりなしに動きまわっているし、禁煙席が空いていなかったので、喫煙席にはいったのも辛かった。四方八方からタバコの煙がくると辛い。
新宿花園神社に行って写真を撮る。7時から開演で、終わるのが2時間後として、やはり腹が減るだろうとコンビニで買ったおにぎり二つも食べる。ふっくら手巻紅さけと手巻シーチキンマヨネーズ。
持っていった小林秀雄の『無常という事』を神社の囲いにもたれて読む。買った三冊のうちのひとつ藤原新也『全東洋街道(上)』も神社の階段にすわって読む。
風が強い日だった。5月にしては寒い。位置を変えながらかなり写真を撮った。位置を変えればいろんな空がみえる。新宿の中心部にある不思議な異空間でもある新宿花園神社にはいろんな人がやって来る、去っていく。その人たちをみていた。
そうしているうちに開場の6時半ちかくになる。いつもより人が多い。花園神社での初日ということを考えても多い。これは蜷川幸雄が演出して、シアターコクーンで1月、2月とやった『下谷万年町物語』の影響なんだろうと思う。
唐組・第49回公演『海星』。唐十郎の作・演出。
ひさしぶりに長い唐組の芝居を観た。というよりふつうの長さの芝居を観た。ここのところの唐組の芝居はずいぶん短かったからな。(という印象です)。『海星』は第一幕と第二幕がある。第一幕は快調だった。「15分間の休憩です」の劇団員の声がなつかしかった。
猥雑さを共有できる。しみったれた店。しみったれた男たちと女たち。わけのわからないこだわりと思いこみ。中心点に向かって迂回し迷走し直進する物語。チンドン屋風女学生姿の唐十郎。薄暗いテントのなかの舞台とゴザの上の席。主役の稲荷卓央がほぼ真っ裸になる場面があって、腹、下腹が見事にすっきりしていた。役者は声を出すことによってああいう身体になるんだろうかと思ったりする。
風がテントの端を巻き上げる。風がテントにからみついて雨のような音をたてる。
ぼくの集中力が足りなかったのか、劇に大きな扉が開くラストはいつものような盛り上がりは感じなかった。ピントが充分にはひきしぼられていないような感じだ。
稲荷卓央が舞台の外に出ていく最後の最後の場面は、脇にいるぼくの席からはみえなかった。みえたら印象は変わっていただろうか。
劇が終わってテントのまわりで他の観客たちに交じってちょっとたむろした。それから暗くなっている花園神社を離れて新宿駅に向かう。東口の駅に近い有名なフルーツパーラーだった所があのグッチに代わっている。もう少し歩くと信号の所で人たちが止まっている。そして動きだす。駅に吸いこまれていく。その群れの中でぼくも東口の明かりの強い階段のなかに降りていく。
木村恭子さんの息のながい手作り個人誌『くり屋』が届いた。53号。53号に書いているのは、秋島芳恵、北沢十一、木村恭子の三人。
こういうふうにちゃんと定期的にそっと届いてくる個人誌には本当に感心する。ぼくにはもう作れないだろうな、手作り個人誌というのは。
秋島芳恵という詩人の存在はこの『くり屋』で知った。80代半ばのひとだがいい詩を書く。北沢十一は「リスボンからの葉書」という友人からの最後の葉書をみつめている詩を書いている。
すごい映画だった。名画といえる。テレビで観たことがあるが、こんな印象はもたなかった。感動というほどのことはなかった。
開放感がすごい。これほど開放感を与えてくれる映画はほかにないんじやないか。こどもたちが、少年たちがE.T.を逃がそうと自転車で突っ走る。大人たちにもう少しでつかまりそうになる。そのとき自転車が浮き、自転車が飛ぶ、このときの開放感がすごい。子供たちの無条件のままの信頼が、大人たちの常識を打ち破る。その事件を目の前で見せられているようだ。ありえないことなのに、それが目の前で起こっているというふうに。
スピルバーグはこういう映画を作っていたんだな。いいもの見せてもらった。
映画は1982年にアメリカでも日本でも公開されて、ぼくはその20周年アニバーサリー特別版というのを観た。
広場の鯉のぼり。
松木俊治さんから同人誌『天蚕糸』が送られてきた。(てぐす)と読むらしい。
この詩誌はもともとは田中勲さんの個人誌としてあったものが、同人誌へと「進化」したらしい。この個人誌から同人誌へという流れが面白い。
ビンとペットボトルのごみ出しに行く。
強い雨だ。
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