今井義行「時刻の、いのり」
今井義行さんの詩集『時刻の、いのり』(思潮社)を読んだ。「ときの、いのり」と読む。
今井さんはたぶん「伝説の詩人」といってもいい人で、(たぶんこの人だけはそういってもいいのだろうと思っている)。ミクシィの日記のページに発表されている詩を読んできたが、あぶなっかしいというか、無防備というか、これはしんどいだろうなという生き方、資質のひとで、その今井さんが毎日のように発表した詩から選んで、一冊の本に、詩集にしたのが、『時刻の、いのり』である。横書きの詩であり、横書きの詩がこれほどすんなりとはいってくるのは珍しいことだ。
会って話したというほどのことがないから、今井義行という人のことをピタッとわかっているという自信はない。書かれたもので今井さんのすべてがわかるということもない。しかし書かれたものと書いているひととの距離がいちばんすくない人だろうと思っている。
言葉の才能にあふれた人で、うつ病、失業という谷底の世界で吐きだされ、つむがれる言葉は、自分を語りながらも、自分とはワンクッション置くことができていて、柔らかく繊細にのびる。
なんとかこわれずに生きて、仕事をみつけて、書きつづけていってほしいと思うが、ぼくがずっと思ってきたことをいえば、まず病気を治すことを優先してもいいんじゃないかということだ。まずゆったりと自分の足で立って、あたりを見回すことができるようになることを優先してもいいのじゃないかと思う。そこから見えることも値打ちのあることかもしれないのだ。
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