勝海舟「氷川清話(ひかわせいわ)」
勝海舟がしゃべっているのをまとめた『氷川清話』(江藤淳・松浦玲編 講談社学術文庫)が面白い。
この本の元本になっている吉本襄(のぼる)が編集した『氷川清話』は、吉本襄が勝手に勝海舟がしゃべったことを書き換えてしまった箇所が多くあるものらしい。その本が出回ってしまった、その本が広く一般に出回っている、ということで編集に携わっている松浦玲の、この吉本襄の書き換えについての切っ先するどい註、訂正が最初に続く。
これを読んでいくのが面倒でもあるが(波に乗れんのだ)、これが過ぎるとだんだん勝海舟の話の面白さに引き込まれていく。
勝海舟は面白い奴だと思う。快男児というのだろう。痛快だ。こういう人がじっさいにいたんだなあ。
西郷隆盛、坂本龍馬、木戸孝允、山内容堂らの同時代を生きた者への人物評、証言。宮本武蔵、北条早雲、西行、新井白石ら勝海舟からすれば歴史上の人物への思い、評価。
いろいろなことをしゃべっているが、「難民の救済」という題の付いているところでは、「天災とは言ひながら、東北の津浪(つなみ)は酷(ひど)いではないか。」というしゃべり出しで、勝海舟の時代にも東北に大津波があったんだと驚かされる。勝海舟は明治政府の大津波の被害への対応に疑問を呈している。こういうことに関しては江戸時代のほうがていねいな救済の仕方、防災の仕方をしていたというのだ。
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