藤沢周平「白き瓶」
藤沢周平の小説『白き瓶 小説 長塚節』(しろきかめ しょうせつ ながつかたかし)(文春文庫)読み終わる。
歌人長塚節の生涯を書いた小説。長塚節との距離がよく取れたスケールの大きな伝記小説だ。藤沢周平のいつもの娯楽小説とは違っていて、おのれの素顔ものぞかせている。しかしこの小説を読んであらためて藤沢周平の力量は並みじゃないと思った。
長塚節は正岡子規の門下の歌人で、同じ門下に伊藤左千夫がいる。ふたりの友情、葛藤、反目が『白き瓶』の大きな流れのひとつとなっていて、ちょうど同人誌にはいろうかと考えているときなので、その意味でも興味深く読んだ。
長塚節は明治から大正を生きた人で、短歌誌「馬酔木(あしび)」「アララギ」に集まった同人のほかに高浜虚子、石川啄木、夏目漱石、森鴎外らが小説のなかに出てくる。森鴎外の開いた集まりを、長塚節が(藤沢周平が)文化的な、趣味的なサロンととらえて、嫌っているのが面白かった。
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