小林秀雄のゴッホ
小林秀雄の『人生について』(中公文庫)という本を読んでいて、「ゴッホ」がいいと思った。
「私の人生観」「中原中也の思い出」「菊池寛」と読んできて、それほどピンとこないと思ったが、「ゴッホ」はいい。こういう小林秀雄が好きだな。ゴッホという人間についてちょっとずれているところがあるのかもしれないという思いがしたが、ゴッホという人間にたどり着こうとする線の輪郭が強くうねっている。小林秀雄にとってゴッホは衝撃だったのだと思う。ゴッホを待っていた小林秀雄がいるのだ。
小林秀雄は思いこみを排除しない。思いこみを含んだものを演奏しつつ、形をならしながら、全体として秩序あるものにまでもっていく。それは正しいやり方だと思う。
自分のすでに感じていることを、先入観や思いこみをとりのぞいてから、対象に向かおうとするのは間違いだ。先入観や思いこみ、あるいは「まちがい」から出発しなければ、意味なんかないのだ。
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