「剱岳 点の記」(つるぎだけ てんのき)
映像のすごい映画だ。本当に凄い。
山の実録というか、ニュースや記録映画ではこれほど山の自然の凄さを写し取ることはできなくて、俳優を使い山を舞台にした映画を撮るという設定によってはじめて、この山の凄さを撮ることができたのだと思う。
ふつう才能というのは、「世界の中心はお前だ」とごく自然に、当り前に、正しく育てられた子どもが大きくなって、時代の強大な圧力にさらされながらも、割合あっさりと、自分のほうに軸足を移せることによって生み出されるオリジナリティーだとすれば、監督の木村大作の才能はかなり特異だ。
山の自然に<私>というものを溶け込ましてしまいながら、私というものを完全に拡散させてしまいながら、すぐれた「作品」を生み出すことができている。例外的な人なんだと思う。
新田次郎原作の、剱岳を初めて測量しようと登山する人間たちの映画、というよりも初めて人間によって測量されようとする剱岳の物語の映画といったほうがいいだろう。
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